数学IIIの積分の問題で、\( \int x e^{x}\,dx \) や \( \int x \sin x\,dx \) のような、多項式と指数関数・三角関数の積の積分に出会うことがあります。
こうした式は、普通の積分の公式をそのまま当てはめても計算できません。どうやって積分すればよいのか、迷う人は多いです。
部分積分法とは、二つの関数の積の積分を、積の微分法の関係を逆にたどることで計算する方法のことです。
この記事では、部分積分法の公式や仕組み、例題の解き方、置換積分法との違いについてわかりやすく解説します。
部分積分法とは
部分積分法とは、二つの関数の積の積分を、次の関係を使って計算する方法です。
\[ \int f(x) g'(x)\,dx = f(x) g(x) - \int f'(x) g(x)\,dx \]
この式は、積分したい関数の積のうち、一方を微分し、もう一方を積分することで、もとより簡単な積分に置き換えられることを表しています。
多項式と指数関数・三角関数・対数関数の積の積分で、特によく使われる方法です。
部分積分法の公式・性質
部分積分法の基本の公式は次の通りです。
\[ \int f(x) g'(x)\,dx = f(x) g(x) - \int f'(x) g(x)\,dx \]
ここで \( f(x) \) は微分する関数、\( g'(x) \) は積分する関数を表します。\( g(x) \) は \( g'(x) \) の原始関数のうち、計算しやすいものを一つ選びます。
定積分でも同じ考え方が使えます。区間 \( [a, b] \) での定積分は次のようになります。
\[ \int_{a}^{b} f(x) g'(x)\,dx = \big[ f(x) g(x) \big]_{a}^{b} - \int_{a}^{b} f'(x) g(x)\,dx \]
この式は、積の形を一度 \( f(x)g(x) \) に戻し、その値を区間の端で評価してから、残った積分を計算することを表しています。
部分積分法の仕組み(積の微分法とのつながり)
部分積分法は、積の微分法の公式を逆から見た方法です。積の微分法では、次の関係が成り立ちます。
\[ \{f(x) g(x)\}' = f'(x) g(x) + f(x) g'(x) \]
この両辺を積分すると、左側は \( f(x)g(x) \) に戻ります。右側は二つの項の積分の和になります。
\[ f(x) g(x) = \int f'(x) g(x)\,dx + \int f(x) g'(x)\,dx \]
この式を \( \int f(x) g'(x)\,dx \) について整理すると、部分積分法の公式になります。公式を覚えるときは、積の微分法から導けることを知っておくと理解しやすくなります。
どちらをf、どちらをg′にする?選び方のコツ
部分積分法を使うときは、積になっている二つの関数のうち、どちらを \( f(x) \)(微分する側)にし、どちらを \( g'(x) \)(積分する側)にするかで計算の手間が変わります。
一般に、微分すると式が簡単になる関数を \( f(x) \) にします。多項式は微分を繰り返すと次数が下がっていくため、\( f(x) \) に選ぶことが多いです。
- 多項式と指数関数の積:多項式を \( f(x) \)、指数関数を \( g'(x) \) にする
- 多項式と三角関数の積:多項式を \( f(x) \)、三角関数を \( g'(x) \) にする
- 多項式と対数関数の積:対数関数を \( f(x) \)、多項式を \( g'(x) \) にする
対数関数は積分が難しく、微分すると式が簡単になるため、対数関数のほうを \( f(x) \) に選ぶ点に注意が必要です。
部分積分法の例題と解き方
ここでは、よく出題される形の例題を使って、部分積分法の手順を順番に確認します。
例題1:\( \int x e^{x}\,dx \) を求める
考え方として、多項式 \( x \) を微分する側、指数関数 \( e^{x} \) を積分する側にします。
\( f(x) = x \)、\( g'(x) = e^{x} \) とおくと、\( f'(x) = 1 \)、\( g(x) = e^{x} \) です。
これを部分積分法の公式に当てはめます。
\[ \int x e^{x}\,dx = x e^{x} - \int 1 \cdot e^{x}\,dx = x e^{x} - e^{x} + C \]
答えは \( x e^{x} - e^{x} + C \)(\( C \) は積分定数)です。
例題2:\( \int x \sin x\,dx \) を求める
考え方は例題1と同じで、多項式 \( x \) を微分する側、三角関数 \( \sin x \) を積分する側にします。
\( f(x) = x \)、\( g'(x) = \sin x \) とおくと、\( f'(x) = 1 \)、\( g(x) = -\cos x \) です。
これを公式に当てはめ、式を整理します。
\[ \int x \sin x\,dx = x(-\cos x) - \int 1 \cdot (-\cos x)\,dx = -x\cos x + \int \cos x\,dx \]
\[ = -x\cos x + \sin x + C \]
答えは \( -x\cos x + \sin x + C \)(\( C \) は積分定数)です。
例題3:\( \displaystyle \int_{0}^{1} x e^{x}\,dx \) を求める(定積分)
考え方は例題1と同じですが、今回は定積分なので、端の値を代入して評価します。
例題1の結果から、\( \int x e^{x}\,dx = x e^{x} - e^{x} + C \) なので、原始関数として \( xe^{x} - e^{x} \) を使います。
\[ \int_{0}^{1} x e^{x}\,dx = \big[ x e^{x} - e^{x} \big]_{0}^{1} \]
\( x=1 \) を代入すると \( 1 \cdot e - e = 0 \)、\( x=0 \) を代入すると \( 0 \cdot e^{0} - e^{0} = -1 \) です。
\[ 0 - (-1) = 1 \]
答えは \( 1 \) です。
定積分での部分積分法
定積分に部分積分法を使うときは、不定積分のときと同じように \( f(x) \) と \( g'(x) \) を選び、公式に当てはめます。
\[ \int_{a}^{b} f(x) g'(x)\,dx = \big[ f(x) g(x) \big]_{a}^{b} - \int_{a}^{b} f'(x) g(x)\,dx \]
ポイントは、\( f(x)g(x) \) の部分を先に区間の端で評価してから、残った積分を計算することです。先に積分を最後まで終わらせてから端を代入しても、同じ答えになります。
部分積分法と置換積分法の違い
部分積分法と置換積分法は、どちらも積分の計算を簡単にするための方法ですが、使う場面と考え方が異なります。
| 比較の観点 | 部分積分法 | 置換積分法 |
|---|---|---|
| 使う場面 | 二つの関数の積の積分 | 複雑な式や合成関数を含む積分 |
| 基本の考え方 | 積の微分法の関係を逆にたどる | 変数を置き換えて式を簡単にする |
| 基本の公式 | \( \int f(x)g'(x)dx = f(x)g(x) - \int f'(x)g(x)dx \) | \( t = g(x) \) とおき \( dt = g'(x)dx \) に変える |
| 計算の手順 | f と g' を選び、微分と積分を一度ずつ行う | 置き換えた変数で積分し、もとの変数に戻す |
実際の問題では、置換積分法と部分積分法を組み合わせて使う場合もあります。どちらを先に使うべきか迷ったときは、式の形が積になっているか、複雑な部分を一つの文字で置けるかを確認すると判断しやすくなります。
よくある間違い
部分積分法の計算では、いくつか共通して起こりやすい間違いがあります。
- \( f(x) \) と \( g'(x) \) の選び方を逆にしてしまい、もとより計算が複雑になる
- \( f'(x) \) の微分や \( g(x) \) の積分を計算し忘れる
- 公式の右側にある \( - \) の符号を見落として、プラスのまま計算してしまう
- 繰り返し部分積分法を使う問題で、符号の入れ替わりを間違える
- 定積分の問題で、\( [f(x)g(x)] \) の端の値の代入を忘れる
特に符号の間違いは多いため、公式を書いた後に、どの項にマイナスがつくかを一度確認する習慣をつけると、間違いを減らせます。
何年生で習う?前に習う言葉・次に習う言葉
部分積分法は、高校数学IIIの積分法の単元で習います。
前に習う言葉として、不定積分と積の微分法があります。部分積分法の公式は、積の微分法の関係を積分の形に書き直したものなので、積の微分法の理解が土台になります。
- 前に習う言葉:不定積分、積の微分法
- 次に習う言葉:部分積分を用いた定積分の計算、置換積分法と組み合わせた積分
どこで使われる?
部分積分法は、高校数学の積分の問題だけでなく、大学で学ぶ数学や、物理・工学などの分野でも使われます。
- 物理での運動や仕事量を表す式の積分
- 統計学で、確率密度関数と変数の積を積分して期待値を求める計算
- 工学分野での、波や振動を表す式の積分
多項式と指数関数・三角関数・対数関数の積が出てくる場面であれば、分野を問わず部分積分法が使われる可能性があります。
まとめ
部分積分法とは、二つの関数の積の積分を、\( \int f(x)g'(x)dx = f(x)g(x) - \int f'(x)g(x)dx \) の関係を使って計算する方法です。
この公式は、積の微分法の関係を積分の形に書き直したものであり、どちらを \( f(x) \)、どちらを \( g'(x) \) にするかを正しく選ぶことが、計算を簡単にするポイントです。
置換積分法とは、変数を置き換えて式を簡単にする点で考え方が異なりますが、実際の問題では両方を組み合わせて使うこともあります。
例題を通じて手順を一つずつ確認し、符号の間違いや選び方のミスに注意しながら練習することで、部分積分法の計算に慣れていくことができます。

